ブリ

なぜブリは養殖ができるの?

今や養殖ものは、日本のブリ消費量の8割にも達します。ブリと同じ回遊魚であるマグロやカツオなどが、養殖が難しいのに対し、なぜブリは養殖ができるのでしょうか?
実は一般的な回遊魚は泳ぎながら海水を取り入れてエラ呼吸をしているため、泳ぎ続けないと死んでしまいます。しかし、ブリは止まっていても金魚のように口をぱくぱくさせて海水中の酸素を取り入れることができるので、遊泳範囲が区切られる養殖でも、弱らずに育てることができるのです。
ちなみに、養殖ものは回転寿司で回らないと言われています。
養殖ブリの若魚であるハマチは、九州や瀬戸内海が主な養殖場となっています。養殖のハマチは、イワシをエサにして短期間で太らせて出荷するので、当然値段も高くなり、水っぽくもなります。養殖ハマチでも、獲れたては身が締まっているのですが、少し時間が経つと身が柔らかくなり脂っぽくなってしまいます。だから作り置きの回転寿司では、ハマチは決して回っていません。お店の人にオーダーして握ってもらいましょう。

※関西や関東など地域によっては、ブリや若魚の養殖ものをハマチと指す場合があります。
※関西や関東など地域によっては、ブリや若魚の養殖ものをハマチと指す場合があります。

ブリの子じゃない「ブリコ」の話

秋田の名産「ハタハタ」の卵は、ブリコと呼ばれます。タラコがタラの子どもであるように、ブリコと聞くとブリの子どもと勘違いする人もいるかもしれません。なぜこのような名前がついたのでしょうか。
まずは、丸くて歯ごたえのあるブリコの卵は、噛むとブリブリと音がするから、という説があります。
また、安土桃山時代の秋田藩主であった佐竹義宣さたけよしのぶにまつわる説もあります。もともと水戸藩主で、ブリが大好物だった佐竹氏ですが、秋田に左遷されてからは、ブリが手に入らなくなりました。そこで、ブリの代用としてハタハタを食していたことから、ハタハタの卵をブリコと名づけたのだそうです。

Fのさかな2号ブリより

タチウオ

タチウオと江戸の小咄タチウオと人工真珠

タチウオの身体を覆い、銀色に輝くグアニン。昔はこれが人工真珠の材料として使われていたのをご存知でしょうか。アコヤ貝などから採られる天然の真珠は、あまり産出されることのない珍しさもあって、古くから世界各地で宝石として珍重されてきました。「月の雫」「人魚の涙」と讃えられる美しい光沢は、今も昔も人を惹き付けてやみません。
そんな真珠の輝きを手軽に味わえるのが人工真珠です。

人工真珠の歴史は意外に古く、17世紀半ばのフランスで中空のガラス玉の内側に魚のウロコから造られた真珠箔塗料(パール・エッセンス)を塗り、さらにロウを詰めたのが始まりとされています。
日本では、明治末期に貿易商であった大井徳次郎がフランス製の人工真珠の研究を平賀義美に依頼したのが始まりだそうです。
初めのうちは、タチウオなどから採られるグアニンをセルロイドに練り込み、それをガラス玉の外側に塗り重ねることで人工真珠が作られていました。

グアニンによってキラキラと輝く人工真珠はとてもよく出来ていたそうですが、次第に鉱物から科学的に作られる人工パール・エッセンスをガラス玉やプラスティック玉に塗る方法に変わっていきました。
おかげで人工真珠は安く、大量に圴一の品質で作られるようになったのです。
とはいえ、現在でも人工真珠の高級品として名高い「マジョリカパール」では、魚のウロコから作られるパール・エッセンスが使われています。

天然真珠に、魚由来のパール・エッセンスを使った人工真珠、工業製品としての人工真珠。
価値はそれぞれ違いますが、選択の幅があるというのはとても素晴らしいことではないでしょうか。

猫が追い払った、真夜中の泥棒

ある夜のこと。
店の主人が物音に気付いて眼を覚ますと、そこには夜目にもギラリと光る、抜き身の刀をさげた強盗が。「金を出せ!」と脅された主人はもう恐ろしくて恐ろしくて、布団をかぶってガタガタガタと震えるばかり。
「もう駄目だ…」と観念していると、何とそれまで足元で寝ていた飼い猫が、強盗の持つ刀めがけて飛びかかる。その勢いに驚いた強盗が逃げ去ると、主人は何とか一安心。
「俺をかばって強盗に立ち向かうとは何と感心な猫だろう、どれ一つ褒めてやろう」
布団から出て猫を見ると、猫は刀にかぶりつき、何とも旨そうに食べている。
不思議に思った店の主人が側に寄ってよくよく見ると、それは何と刀ではなくタチウオ…。
強盗も店の主人も猫一匹に叶わない、そんなお話。

Fのさかな31号タチウオより

オコゼ

オニオコゼの別名

オニオコゼは、その容貌と毒のせいで印象が強いためか、各地方によって様々な名で呼ばれています。広島県の「オコジン」や新潟県の「オコジョ」はオコゼが訛ったものですが、静岡県では「ボウチョオカサゴ」と呼ばれます。「ボオチョオ」とは方言でカサブタのことで、「カサブタのあるカサゴ」という意味になります。オニオコゼの見た目をよく捉えた呼び名です。淡路島では「イジャジャミ」と呼ばれます。漢字では「棘棘魚」または「苛苛魚」と書き、元々は「イライラミ」と呼ばれていたものが訛ったと言われています。こちらはオニオコゼが持つ毒のトゲから名付けられた呼び名だと思われます。和歌山県では「ツチオコゼ」と呼ばれます。頭が大きく体が細いというオニオコゼの外見から「槌(ハンマー)のような形のオコゼ」と呼ばれたのでしょう。

どれもオニオコゼの特徴から名付けられたものですが、それぞれ着眼点が違うところが面白いところです。ちなみに英語ではDevil Stin-ger(刺す悪魔)やScorpion Fish(サソリウオ)と呼ばれます。どちらも毒のトゲから名付けられたものですが、世界中どこでもオニオコゼの印象は同じようです。

魔除けのお守り代わり?オコゼの干物

また、沖合いに棲んでいるオニオコゼには体が赤みがかっているものがいるため、漁師の間では「アカオコゼ」と呼ばれて区別されることもあるようです。さらにオニオコゼには、全国各地で「ヤマノカミ」と呼ばれたという伝承があります。かつて猟師の間では、山の奥深くで人喰い鬼婆に出会ったらオコゼの干物を投げつけて逃げろ、醜い鬼婆は自分より醜いオコゼに気を取られるので、その隙に逃げられるという言い伝えがあったそうです。そのため、魔除けのお守りとして「ヤマノカミ」と呼ぶようになったと言われています。

他にもオコゼ自身に神様の力が宿っていると考え、紙に包んだオコゼの干物に対して猟師が「獲物が穫れたら紙を開いて解き放ってあげよう」と頼むからという話や、山の神様がとてもオコゼを見たがることにつけこんだ猟師が「獲物を獲らせてくれたらオコゼを見せてあげます」と祈るからという話もあり、「ヤマノカミ」と呼ばれるようになった由来は本当に様々です。

三重県に伝わるオコゼ伝説

三重県尾鷲市の矢浜地区には二百年以上の歴史を持つ奇祭「山の神笑い祭」があり、次のような伝説が残されています。
『昔々、山の女神様と海の神様の間で山の幸・海の幸を集める勝負がありました。同数引き分けになろうとしたところにオコゼがひょっこり現れ、おかげで山の女神様は勝負に負けてしまいました。
そのせいで負けず嫌いな山の女神様はオコゼを酷く恨むようになったので、村人達は女神様を慰めるために「こんな醜いものは魚ではありませんよ」と懐に入れたオコゼをちらちら見せながら笑い飛ばすお祭りをはじめることになりました。』

いろいろなエピソードに囲まれながら、海と山を取り結ぶオニオコゼ…ちょっと不思議な魚です。

Fのさかな20号オコゼより

コノシロ

江戸前鮨事情

江戸前鮨のコハダは、「光り物」として主役級です。諺の「鮨はコハダに止めをさす」とは、通の間では味の濃さや生臭みの強いコハダを先に食べてしまうと、後から食べる鮨の味がわからなくなるからだといいます。
コハダの塩加減、酢じめ加減は鮨職人の腕の見せどころで、その鮨屋の看板にかかわります。江戸前鮨の真骨頂、それがコハダなのです。

コハダ(コノシロ)の仕込みで職人の腕がわかると言われる江戸前鮨
コハダ(コノシロ)の仕込みで職人の腕がわかると言われる江戸前鮨

大きくなったのに安い?

コノシロはブリなどと同じ出世魚として知られます。ブリは成長に伴い市場価格もどんどん上がります。 コノシロの場合、寿司ネタで人気のシンコやコハダサイズの初物は、1キロ数万円になることもあるそうです。大きくなると更に高くなるかと思いきや予想に反して下落する一方。小骨が多いことや独特な匂いが災いするのか、大きくなるにつれて価格が下がり市場から遠ざかります。出世魚といわれる割に存在感が薄くなるコノシロです。

鮨屋のコハダ専門用語

五枚づけ→→五匹で1カン(シンコ以下)
丸づけ→→→一匹で1カン(コハダ)
片身づけ→→片身で1カン(ナカズミ)
コノシロは使わない。

韓国ではモテモテ

さて、日本で敬遠されるコノシロを焼く匂いは、韓国では大歓迎。秋になると、細かく骨切りしたコノシロを網で焼いたりフライパンで焼いたりして食べます。
韓国のコノシロは「盆に娘を呼び戻す魚」と言われます。コノシロを焼く匂いにひかれて、家を出た娘も戻ってくるというもの。コノシロを焼く匂いは、韓国では懐かしく、食べたくなる匂いなのです。

武士達に朗報

お殿様のいる江戸では、武士達はコノシロ(この城)を焼いたり食べたりすることは、とんでもないことだ!と食べませんでした。
身近な魚ながら、なかなか口にすることができなかった江戸の人々。やがてコノシロに塩をして酢でしめると旨いと評判を呼びました。
評判のコノシロを食べたいけれど…。指をくわえて眺める武士達。やがて、若魚名の「コハダ」と呼べば気兼ねなく食べられるとひらめき喜んで食べたそうな。それ以来どんなに大きくなっても江戸の人々はコノシロとは呼ばず「コハダ」と呼んだそうです。

尾びれの形で分かる泳ぎの得手不得手

コノシロなど二叉形(にさけい)の尾鰭をもつ魚は、泳ぎがとても得意です。大型魚ではカツオやブリ、小型魚ではアジやイワシなどがあげられます。逆に円形の尾鰭をもつ魚はあまり泳ぎが得意では、ありません。例えばマンボウ、ハゼ、カワハギ、淡水魚ではドジョウなどがあげられます。どうですか、納得しませんか?

このしろの尾びれ
このしろの尾びれ

コノシロにまつわることわざ

・ コノシロの昆布巻き/鮎の昆布巻とは大違い、見かけはいいが味が良くないと言う意味で、外見だけで中身が伴わないことのたとえ。
・ コノシロの背中のよう/コノシロの背は色艶がよく光沢があり美しいことから、衣服などに光沢があることをいう。
・ 一昨日漁れたコノシロ/鮮度の良くない魚を形容することわざ。コノシロは味が落ちるのが早いのでこのように言われる。
・ 秋のコノシロ嫁に食わすな/コノシロの一番旨い時期をいう。コノシロは小骨が多いので、ノドに刺さらないようにと気をつかってのこと。
・ 兄と弟(魚屋の隠語)/兄は年を取っていることから古くなった魚のこと。反対に弟は新鮮な魚のこと。同様に「お泊り」は前日仕入れた魚の売れ残り。

Fのさかな15号コノシロより

ズワイガニ

日本周辺に棲むズワイガニの仲間

日本周辺に生息するズワイガニの近縁種には、ベニズワイガニとオオズワイガニ(バルダイ種)がいます。
ベニズワイガニはズワイガニに比べ甲羅の形が三角形なのと、生きているときからかなり赤いことで区別がつきます。ズワイガニに比べ身肉に水分が多いため味はやや劣ると言われていますが、食感は繊細で甘みがあり、価格も手頃であることから人気があります。
オオズワイガニはズワイガニと外観や体色がよく似ていますが、ズワイガニは口の上の部分が水平になっているのに対し、オオズワイガニではM字形になっていることで区別できます。身が大きく甘みがあるのが特徴です。
両種ともにズワイガニとの間に交雑種ができます。
また、通称で丸ズワイガニと呼ばれるカニもいますが、こちらはズワイガニの仲間ではなく、和名をアメリカオオエンコウガニと言い、南米やアフリカなどの南大西洋岸で採られるカニです。

加能ガニのゆであげ作業
加能ガニのゆであげ作業

食卓でお馴染みの他のカニ

ズワイガニ以外に食卓に馴染みのあるカニには、毛ガニとタラバガニがあります。
毛ガニは、文字通り甲羅から脚の先まで生えている硬い毛が名前の由来になっています。この毛が生えている理由には諸説ありますが、はっきりした理由はわかっていません。
毛ガニが美味しい食材として有名になったのは、戦後になってからのことで、食料品統制を受けていた戦時中にしかたなく茹でた毛ガニを売り出したことがきっかけとなり、終戦後、人気を博すようになったそうです。
また、モクズガニも鋏に柔らかい毛が密生しているため、地方名で毛ガニと呼ばれることがありますが、違う種類のカニです。仲間に中華料理でお馴染みのシャンハイガニがいます。
タラバガニという名前は、鱈の漁場に棲んでいるカニという意味です。鱈漁の際、偶然発見され、漁が行われるようになりました。近い仲間にアブラガニがいます。
小林多喜二の『蟹工船』に出てくるカニはタラバガニだと言われており、蟹工船で作られるタラバガニの缶詰は、かつて日本の有力な輸出産品でした。
タラバガニは、カニとは呼ばれていますが、実はズワイガニや毛ガニのような真のカニ類ではありません。脚の数など体の特徴を見ると、ヤドカリ類と共通している点があり、「カニの形をしたヤドカリの仲間」というのが正体のようです。

ズワイガニの地方名・ブランド名

ズワイガニは、水揚げされた地方や港によってタグが付けられ、それぞれ地域ブランドとして差別化を図っています。
ヨシガニ〈北海道・山形〉、加能(かのう)ガニ〈石川〉、越前(えちぜん)ガニ〈福井〉、間人(たいざ)ガニ〈京都丹後半島〉、津居山(ついやま)ガニ〈兵庫〉、松葉(まつば)ガニ〈鳥取〉

雌は、雌(め)ガニ、親(おや)ガニ、コッペガニ、香箱(こうばこ)ガニ、勢子(せいこ)ガニ、クロコと呼ばれています。

ベニズワイガニ
ベニズワイガニ
石川県のズワイガニ(加能ガニ)のオスとメスの大きさ比べ
石川県のズワイガニ(加能ガニ)のオスとメスの大きさ比べ

Fのさかな17号ズワイガニより

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アマダイ

地方によって異なるアマダイの呼び名

アマダイには各地でいろいろな呼び名があります。京都や福井ではグジ、大阪や福岡、長崎県の壱岐ではクズナ、静岡ではオキツダイ、山陰地方ではコビリまたはコビル、愛媛ではスナゴなど。
グジはアマダイの地方名の中でも最も有名でしょう。前述したように、アマダイは古くはクズナと呼ばれていましたが、そのクズナがいつしかクツと縮めて呼ばれるようになり、やがてグジへと変化したと言われています。
グジと言えば、福井県の若狭湾で水揚げされる「若狭グジ」は全国的にも知られるブランド魚ですし、京料理では欠くことが出来ない素材です。サバ街道を通って京の都へと運ばれたアマダイは、「若狭もの」と呼ばれて昔から珍重されてきました。
また、地方には現在でも古い言葉が残されていることがありますが、壱岐などで呼ばれるクズナはその典型と言えるでしょう。
コビリ(コビル)は、アマダイが他の「タイ」がつく魚に比べて小さいことから来た呼び名だと言われています。なので、ひょっとしたら「小振り」が訛ってコビリになったのかもしれません。
愛媛での呼び名スナゴは、アマダイが砂に潜る習性から「砂子」と呼ばれたのでしょうか。
中国では、その角張った頭の形から「馬頭(マータウ)」と呼ばれるようです。アマダイの中でもシロアマダイは白っぽい体の色から「シラカワ」と呼ばれることもあります。

徳川家康とアマダイ

アマダイは静岡ではオキツダイと呼ばれます。この呼び名には様々な由来が伝えられています。 最も有名なのは、興津局(おきつのつぼね)と言う女性から来たと言うものです。
昔、徳川家康が静岡の駿府城に滞在していた時、その興津局が生干ししたアマダイを献上したそうです。そのあまりの美味しさに喜んだ家康はアマダイを「興津鯛(おきつだい)」と名付け、功を労ったと伝えられています。
また、ある時、御膳に並べられたアマダイを見て、家康が興津局に「これ、興津、鯛か?」と訪ねたのが由来とも言われています。
他には、駿河湾の奥(奥・津=港から離れたところ)で獲られることから「奥津鯛」と呼ばれるようになったという説もあります。
そういえば、駿河湾で獲られるアマダイのウロコは富士山の形をしているとされ、武士の間では縁起物として珍重されたそうですが、実のところ、どこで獲られてもアマダイのウロコの形はみんな同じ。きっと武家の頭領である徳川家にあやかることで縁起を担いだのだと思われます。
ところで徳川家康といえば、「鯛の天ぷらによる食中毒で死んだ」というお話は有名です。
本当は天ぷらではなく南蛮漬けだったという話もありますが、それはさておき、この料理に使われた魚がアマダイだったと言われています。
実際には家康がその料理を食べてから亡くなるまでに3ヶ月も経っていますので、このお話は俗説でしかなく、本当の死因は胃がんではないかとされています。
おそらく為政者を笑うことで庶民は気晴らしをしていたのでしょう。

アダマイ
アマダイ


Fのさかな25号アマダイより

アイナメ

地方によって異なるアイナメの呼び名

アイナメは、鮎並」・「鮎魚女」・「愛魚女」といろんな漢字で書かれ、それぞれに由来があります。産卵期に縄張りを守って互いの口でかみ合うことから「相嘗」と書かれることもあるそうです。
この魚は昔から親しまれているため、各地には様々な呼び名があります。北海道では「あぶらこ/あぶらっこ(油子)」、東北と関西・四国では「あぶらめ(油魚)」。 これらはまるでアイナメの体に油が塗られているように見えたり、身に脂が多いためにこう呼ばれるようになったようです。
また、同じ場所にじっとしている習性から、東北の一部では「ねう/うえうお(根魚)」・「しんじょ(寝所)」、新潟や丹後では「しじゅう/しじょう(始終)」と呼ばれています。
能登半島では「あぶらめ」と呼ぶことが多いのですが、「しじゅう」と呼ぶ地域もあります。
広島県では「もみだねうしない(籾種失)」という変わった名前になります。この魚をご飯のおかずにすると種もみまで食べてしまうほど美味しいからとか、美味し過ぎて大切な種もみを買うお金をはたいてでも食べたくなるからだそうですが、面白い呼び名もあるものです。
他にも「ええなあ」「こっくり」「とろろ」など、各地方独特の呼び名があり、アイナメの愛され具合がわかります。
英語ではKelpfish(ケルプフィッシュ=藻場の魚)、greenling(グリーンリング=海藻に似た魚)、中国語では学名と同じように「六線魚」と呼ばれます。

あぶらめと輪島塗

石川県能登半島の輪島市といえば、輪島塗が有名です。 輪島塗は職人達の丁寧な手作業によって生み出される漆器の名品。塗りに124もの工程を費やすことで、堅牢優美な漆器が生まれます。
そんな輪島塗に携わる職人はずっと座ったまま仕事をするので、どうしても運動不足になりがちです。そのため、かつての輪島塗の職人達は秋になると一日仕事を休みにして「あぶらめ釣り」に出かけ、英気を養ってきました。
その折、「粋」が真骨頂の職人は自ら「あぶらめ」専門の釣り竿を作り、それに得意の漆芸の腕をふるったといいます。
さて、「あぶらめ釣り」の日になると、職人達は夜明け前から釣り竿をおろし、後から来た女性陣や弟子達は海辺に簡単なカマドを作ります。
釣りたての「あぶらめ」を軽く焼いてから野菜と一緒に鍋に入れれば、青空宴会の準備は万端。釣りの成果を自慢しながら、にぎやかな宴が始まります。現在では秋のレクリエーションとして「あぶらめ釣り」を行う塗師屋さんも少なくなったようですが、伝統ある行事として未来に残ってほしいものです。

Fのさかな24号アイナメより

マグロ

しゃちほこの初代モデル

奈良時代から平安時代の寺院や仏殿建築の棟飾りに見られる鴟尾(しび)は、中国伝来で建物を火災から守るといわれるもの。奈良県の唐招提寺金堂の鴟尾が有名。
大きな魚の尾が天上に向けて突き出ている様は、屋根を海に見立て、水中にある建物は燃えないというわけ。この大きな魚はマグロがモデルだったそうです。これが後世にしゃちほこに変化したとのこと。

寺社の棟飾りのしゃちほこは、マグロがモデルといわれる
寺社の棟飾りのしゃちほこは、マグロがモデルといわれる

大掛かりな解体

イベントの目玉企画として行われるマグロの解体ショーは、見事な庖丁さばきと職人技で観る人を惹き付けます。
大きなマグロの解体には何本もの刃物を使いわけます。中には日本刀のような刃渡りの長いマグロ卸庖丁を使うこともあり、刃物を扱う人、動かないように押さえる人など数人がかりで手際よく行います。

大勢で役割分担して行われるマグロの解体ショー
大勢で役割分担して行われるマグロの解体ショー

熱血なわけ

多くの魚類は冷血なのにマグロの体温は高いことで知られます。
マグロの動脈血はエラの毛細血管を通る際に、海水で直接冷却されるため低温。一方、体内を巡ってきた静脈血は運動熱で高温。
マグロの体内ではこの動脈血と静脈血が並行して逆方向に流れる部分で、動脈血が静脈血より効率よく熱を受取るため高体温を維持している。このため運動機能が維持され高速遊泳を可能にしています。

尾を切り落とす謎

輸入される冷凍クロマグロは輸送コストを削減するためヒレや内臓などを取り除いた状態のものが多い。
冷凍物は、切り口を手かぎで掘って肉を指で練りながらその感触で判断します。生の場合は、赤身の色艶や脂ののり具合で良し悪しを判断。内臓を取った腹部を懐中電灯で照らし、色で脂ののりを見わけることもあります。
ちなみに、ブロックになった身肉は、背側を背節(赤身)、腹側を腹節(トロ)と呼び更に頭側から尾側に向いカミ、ナカ、シモと区別され、それぞれの部位は味や価格が異なります。

尾を切り落とし、切り口から肉の感触を確かめ、良し悪しを判断する
尾を切り落とし、切り口から肉の感触を確かめ、良し悪しを判断する

Fのさかな16号マグロより

イワシ

iwashibo

昔、大衆魚だったイワシ、今は高級魚に

イワシと言えば誰もが知っている馴染みの魚です。大量に捕れた時には食卓に上る機会も多く、飽きてしまうこともありました。マイワシは数十年周期で豊漁と不漁が繰り返されていることをご存じでしょうか?不漁期に当たる近年は以前より店頭に並ぶことも少なくなり、たまに大羽と言われる大きなマイワシがあがると高級魚扱いになることも珍しくありません。名前の由来は、いやしい魚→いやしが訛って「いわし」。弱い魚なので「よわし」→「いわし」に転じたとも言われます。

 

 

イワシの生態

主にマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシの3種類を総称して「イワシ」と呼んでいます。イワシを漢字で書くと、魚ヘンに弱と書いて「鰯」となり、文字通り鮮度落ちが早く、すぐに死んでしまったり、サバやアジ、カツオ、マグロなどの肉食性魚類や、クジラ、イルカ、人間などに食べられてしまう弱い魚なのです。

しかしイワシが少なくなると、それを栄養源にしている魚類にも影響が及び、弱い魚といえども食物連鎖では重要な位置を占める大切な魚なのです。食物連鎖で重要な位置を占めるイワシ類は、孵化しても殆どがマグロやカツオ、アジなど他の魚の餌になることが多く成魚になるまでの生存率は低いのです。このようにむさぼり食われるため「海の牧草」と呼ばれるほど。そんなイワシ類は種族が絶えないように他の魚類に比べて産卵数の多いことが特徴です。

餌食になるイワシには敵の攻撃をかわす技があります。密集した大群を作り、大きな塊ごと一斉に同調した泳ぎで敵の攻撃をかわすのです。

イワシは、海の表層近くを浮遊するアミ類、エビ・カニの幼生、ヤムシ、魚卵などの微小な動物プランクトンを摂餌。マイワシは珪藻類などの植物プランクトンも食べます。口を大きく開けて泳ぎ、海水ごと飲み込み密生した鰓耙(サイハ)でプランクトンを濾過摂食します。

 

 

イワシの種類と特徴

マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの外見的な違いは体の黒斑点や口、眼、腹びれの位置などで容易に判別できます。

まずマイワシは体側に7つ前後黒い斑点が並び、別名「ナナツボシ」と呼ばれます。マイワシは、日本海各地の沿岸、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海、オホーツク海、北西太平洋に広く分布。大きな群れで広域に季節回遊します。体形は細長くやや側扁。体色は暗青緑色、腹部は銀白色。体側に1〜2列の7つほどの黒色斑点があり「ナナツボシ」とも呼ばれます。この黒点がはっきりしているものが鮮度が良い。体長は25cmに達します。新鮮なものは、寿しネタや、刺身で、かば焼きや天ぷらで食べられます。別名は、イワシ、ナナツボシ、ヒラゴ、オイサザ、ヤシ【真鰯・ニシン目ニシン科マイワシ属】

 

ウルメイワシは、マイワシに似ていますが黒色斑点がありません。眼は脂瞼とよばれる脂肪膜に覆われているため潤んで見えます。体形は細長く円筒形。体色は暗青色、腹部は銀白色。胸びれと腹びれは黒みがかっています。大物は体長は30cmほどに成長します。ウルメイワシの腹びれは、背びれ起部より後方に位置しています。別名をウルメ、ノドイワシ、ドンボイワシ、メブトイワシ、 ロウソクイワシ、メグロイワシ、センキ、オオメイワシ、ギドと呼んでいます。【潤目鰯・ニシン目ニシン科ウルメイワシ属】

 

カタクチイワシは、体形は細長く円筒形。マイワシに比べて背が青黒いため「セグロ」とも呼ばれます。腹部は銀白色をしていて、ワシは下あごが短く上あごが突き出て見えます。カタクチイワシの腹びれは、背びれ起部より前方に位置しています。カタクチイワシは下あごが短く上あごが突き出ていて、口の形が片寄ってみえることが名前の由来。マイワシ、ウルメイワシと比べてもカタクチイワシの口は大きく眼の後方まで続いています。体長は13cm前後に成長し、カツオの生き餌釣りに使われます。煮干しやシラス、ちりめんじゃこなどに加工されます。お正月のおせち料理に欠かせない田作りに使うイワシは、カタクチイワシの幼魚です。別名は、カタクチ、ヒシコイワシ、セグロイワシ、タレクチイワシ、シコ【片口鰯・ニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属】

 

イワシは、成長の段階による呼び名もあり、3.5cm以下をシラス、3.5〜6cmはヒラゴ、カエリと呼びます。6〜12cmはコバ(小羽)、12〜18cmになるとチュウバ(中羽)。18cm以上はオオバ(大羽)になり、さらに20cm以上の大型はオオガライワシで高級魚として扱われます。

 

 

イワシの栄養

イワシ類は良質のたんぱく質と、病気に対する抵抗力を高め精神を安定させる効果があるカルシウム、その吸収を助けて骨を丈夫にするビタミンDが豊富に含まれます。

血合部分には、皮膚の弾力性を保ち唇のあれを防ぐビタミンB2、悪性貧血を予防、肝臓の強化に役立つビタミンB12、低血圧症や貧血の予防に役立つ鉄分もあります。また脂肪の代謝に深いかかわりがあるB6も多く含み、不足すると皮膚炎、神経炎、肥満、動脈硬化になりやすい。さらに血圧を正常に保つタウリン、血栓の予防や脳の老化防止に役立つEPAやDHAは、青魚の中でも含有量が多く生活習慣病には最強の味方です。ただし、鮮度が落ちると酸化によって逆効果になることも。

 

イワシの目利き

北陸地方では「カゲを見よ」ということがあります。「カゲ」とは鰓蓋を開けると中にブラシ状の鰓耙といわれる部分があり、これを指します。この部分が赤くみずみずしい色をしていれば新鮮な証拠です。目利きのポイントは、眼が澄んで、ふっくらしていること。イワシは鱗がはがれやすく、鱗が残っていれば取り扱いが良好だった証拠。店頭に並ぶ時は鱗がはがれたものが多い。マイワシなら黒点が明瞭なこと。鮮度が落ちると薄れます。体色が鮮明で張りがあること。

 

イワシの食文化と料理

大衆魚の代表であるイワシは、塩漬け、煮干、干物、オリーブ油漬けなどさまざまな加工品が出回っています。このような加工品は山間地域の人達にとって、塩分、たんぱく質、カルシウムなどの補給源として欠かせない貴重なものでした。

イワシを使った自慢の郷土料理は全国にたくさんありますが、加賀や能登にも「こんかいわし」というものがあります。イワシの糠漬けのことを米糠がなまって「こんか」と呼びます。流通事情が悪かった頃に冬の保存食として重宝されたもの。荒天続きで出漁できない時期の食材の一つで、大漁で安値の時にイワシを買込み各家庭で糠に漬込みました。そのまま焼いて香ばしくご飯のおかずに。糠を洗い落として薄切りにし酢をかけてもよし。こんかいわしの旨味と塩味を生かし、野菜と酒粕を加えた鍋料理「べか」(石川県羽咋)も冬場の人気メニューです。