コノシロ

江戸前鮨事情

江戸前鮨のコハダは、「光り物」として主役級です。諺の「鮨はコハダに止めをさす」とは、通の間では味の濃さや生臭みの強いコハダを先に食べてしまうと、後から食べる鮨の味がわからなくなるからだといいます。
コハダの塩加減、酢じめ加減は鮨職人の腕の見せどころで、その鮨屋の看板にかかわります。江戸前鮨の真骨頂、それがコハダなのです。

コハダ(コノシロ)の仕込みで職人の腕がわかると言われる江戸前鮨
コハダ(コノシロ)の仕込みで職人の腕がわかると言われる江戸前鮨

大きくなったのに安い?

コノシロはブリなどと同じ出世魚として知られます。ブリは成長に伴い市場価格もどんどん上がります。 コノシロの場合、寿司ネタで人気のシンコやコハダサイズの初物は、1キロ数万円になることもあるそうです。大きくなると更に高くなるかと思いきや予想に反して下落する一方。小骨が多いことや独特な匂いが災いするのか、大きくなるにつれて価格が下がり市場から遠ざかります。出世魚といわれる割に存在感が薄くなるコノシロです。

鮨屋のコハダ専門用語

五枚づけ→→五匹で1カン(シンコ以下)
丸づけ→→→一匹で1カン(コハダ)
片身づけ→→片身で1カン(ナカズミ)
コノシロは使わない。

韓国ではモテモテ

さて、日本で敬遠されるコノシロを焼く匂いは、韓国では大歓迎。秋になると、細かく骨切りしたコノシロを網で焼いたりフライパンで焼いたりして食べます。
韓国のコノシロは「盆に娘を呼び戻す魚」と言われます。コノシロを焼く匂いにひかれて、家を出た娘も戻ってくるというもの。コノシロを焼く匂いは、韓国では懐かしく、食べたくなる匂いなのです。

武士達に朗報

お殿様のいる江戸では、武士達はコノシロ(この城)を焼いたり食べたりすることは、とんでもないことだ!と食べませんでした。
身近な魚ながら、なかなか口にすることができなかった江戸の人々。やがてコノシロに塩をして酢でしめると旨いと評判を呼びました。
評判のコノシロを食べたいけれど…。指をくわえて眺める武士達。やがて、若魚名の「コハダ」と呼べば気兼ねなく食べられるとひらめき喜んで食べたそうな。それ以来どんなに大きくなっても江戸の人々はコノシロとは呼ばず「コハダ」と呼んだそうです。

尾びれの形で分かる泳ぎの得手不得手

コノシロなど二叉形(にさけい)の尾鰭をもつ魚は、泳ぎがとても得意です。大型魚ではカツオやブリ、小型魚ではアジやイワシなどがあげられます。逆に円形の尾鰭をもつ魚はあまり泳ぎが得意では、ありません。例えばマンボウ、ハゼ、カワハギ、淡水魚ではドジョウなどがあげられます。どうですか、納得しませんか?

このしろの尾びれ
このしろの尾びれ

コノシロにまつわることわざ

・ コノシロの昆布巻き/鮎の昆布巻とは大違い、見かけはいいが味が良くないと言う意味で、外見だけで中身が伴わないことのたとえ。
・ コノシロの背中のよう/コノシロの背は色艶がよく光沢があり美しいことから、衣服などに光沢があることをいう。
・ 一昨日漁れたコノシロ/鮮度の良くない魚を形容することわざ。コノシロは味が落ちるのが早いのでこのように言われる。
・ 秋のコノシロ嫁に食わすな/コノシロの一番旨い時期をいう。コノシロは小骨が多いので、ノドに刺さらないようにと気をつかってのこと。
・ 兄と弟(魚屋の隠語)/兄は年を取っていることから古くなった魚のこと。反対に弟は新鮮な魚のこと。同様に「お泊り」は前日仕入れた魚の売れ残り。

Fのさかな15号コノシロより