今、日本の食を考える

日本の食文化は日本の食材で

世界が目を見張った日本の高度成長は、私たちに世界第二位の経済発展をもたらしました。しかし一方で、自然に依存する第一次産業は、工業化と急激な森林開発の波にさらされ、環境破壊という大きなツケを二十一世紀に残しました。便利さ、快適さと引き換えに食糧を始めとする物資供給の外国依存が増え、減反政策と相まって自給率は40%以下と先進国では最も低く、「飽食の国日本」は、食の変化とともに世界一の食糧輸入大国となりました。これは、古代ローマ帝国が滅亡した自給率低下と同じプロセスと言われております。欧米を中心とする先進諸国では、食の侵略から国を守るため、自国の食は自国で賄うという考えは当然であり、他の産業とともに農業生産の維持と向上を図っています。

今、日本人を支えている食材の大半は日本以外の国で賄われ、食の安全を海外に委ね、一方で、大量の食べ残しを捨てています。食べ物に不自由しないと、命を縮めると言いますが、国土の豊かな田んぼや畑を守ることは日本人の命を守ることでもあります。私たちは自らの食卓を見直し、子供の躾から食材の流通経路や選び方、使い方・捨て方までを含め、もう一度考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

たくさんの水を買っている日本

〝大量の食糧を輸入する”ということは、〝大量の水も一緒に輸入する”ということです。この事実を日本人はもっと真剣に考えなければなりません。2050年には70億人が深刻な水不足に陥る恐れがあるといいます。しかし日本では、「世界の水危機」といわれても実感できないほど水資源が豊富です。水というと、飲み水と生活用水を連想しますが、日本は多量の食糧を輸入しているため、自国の水資源を使わず、生産国の貴重な水資源を使っているという当たり前の事実をほとんどの人は知りません。こうした食糧生産に必要な水、バーチャルウォーター(間接水または仮想水)の消費量もまた世界一位です。日本は「食糧輸入大国」と同時に「水の輸入大国」でもあるのです。

地球温暖化や気象の変動で降水量が減り、干ばつに見舞われる国がもっと増える可能性もあります。世界の水危機は日本の食糧危機を誘発することを考えると、私たちは意識して国産品を買い、食べものを粗末にしないで水を大切に使う日常の心がけが必要です。

フードマイレージ

この言葉は、日本の或いは世界の「食の危機」を考える上で、必ず登場する言葉です。農場や魚場から消費者の食卓まで運ぶ輸送距離をフードマイルといい、地球環境に与える影響の大きさを表す指標をフードマイレージといいます。
例えば高級魚のマグロは何千キロの距離を空輸するとなるとエネルギー消費量と二酸化炭素の排出量は膨大になります。また、国内であっても、トラックや飛行機などの排気ガスが大気を汚染し、二酸化炭素を大量に増加させます。できるだけ地域内で生産された農水産物を消費することで環境に与える負荷を軽くしたいものです。

昔は自給自足で、人間の呼吸以外に炭酸ガスを排出する道具はありませんでした。食品の安全性の面からも、作った人の顔が見え、新鮮でおいしく、環境に優しい、エネルギーの無駄づかいのない、地消地産の食べ物の価値を改めて見直したいものです。

◇参考資料
 『戦後史』中村政則 岩波書店
 『食育のすすめ』服部幸應 ローカス
 『日本人の“命”を縮める「食」』郡司和夫 三笠書房
 『食育の本』服部幸應 マガジンハウス

文:NPO日本食育インストラクター会員 佐味慶子(認定B2-090002)

Fのさかな15号コノシロより