能登瓦

残したい能登の景観

陽光に反射して艶やかに光る黒い瓦。
雨あがりのような光沢を放つ瓦は
「能登瓦」と呼ばれ、昔から能登の民家で使われてきた。
能登を訪れた旅人は、
黒光りする瓦屋根に魅了されるという。

能登瓦
能登瓦の家並みが続く漁村

雨や雪に強い能登瓦

全国には風土に合った瓦が存在するが、能登瓦もそのひとつ。
「弁当忘れても傘忘れるな」と言われているくらいこの地方は雨が多い。
秋から冬にかけて特に多く、冬は湿気を含んだ重たい雪が降る。
そんな厳しい気象条件の下、家屋を風雨から守る瓦には耐久性が求められる。
能登瓦は1200℃の高温で焼成するため、
生地が固く締まり耐久性にすぐれている。

さらに表面だけでなく裏面にも釉薬をかけ全体をガラス質で
コーティングする。こうすることで、表面がなめらかで雪の
すべりがよく落ちやすくなるのだ。

JIS規格では釉薬瓦に分類される。一般の釉薬瓦が吸水率12%
以下なのに対し、能登瓦は7.5%(石川県工業試験場試験データ)。
瓦を通して屋根材に水分が染み込むのを防ぐ。

能登瓦
農村地帯の統一感のある家並み

豪雪地帯の御用達

能登瓦の歴史は、江戸末期にさかのぼる。
田んぼの土を原料に山から切り出した薪を燃料として、
農村地帯で生産されてきた。

江戸時代は寺や神社にしか使うことを許されなかったが、
明治に入ると民家でも瓦で屋根を葺くようになっていく。

明治・大正時代には、船で新潟や東北、北海道まで運ばれた。
寒さに強い能登瓦は、日本海側の豪雪地帯でその品質を認められ
広く普及した。今でも新潟などに能登瓦の家並みが多く残っている。

昭和初期には家内工業的にいくつもの窯元が誕生した。
昭和50年代に生産量がピークを迎えたが、
その後減少の一途をたどり、現在、石川県内では小松協栄瓦株式会社1社のみとなった。

能登瓦
陽を照り返す黒瓦

調和のとれた瓦の美

能登瓦の特徴は、なんといってもその輝きである。
築後何十年と経っている家でも、屋根を見るとまるで新築のよう。
お天気のよい日は、太陽の光を受けてつやつやと光る。

「吾妻建ち」の民家と能登瓦との組み合わせも見事だ。
吾妻建ちは北陸一帯に多く見られる、玄関のある正面側に大屋根を
載せた民家のかたちである。白壁に束と梁を格子状に組んだリズム感と
ダイナミックな屋根とのバランスが目を引く。

能登瓦
どっしりとした構えの吾妻建ち民家、もちろん屋根には能登瓦

一つひとつの美しさもさることながら、
まとまるとひとつの景色となって見ごたえがある。
能登瓦の連続した風景が見られる場所がいくつかある。
志賀町の福浦港一帯や、大沢間垣の里、輪島市門前町黒島の
家並みが代表的。他にも、能登半島をドライブすると、
そこかしこに黒瓦の家々を目にすることができる。
廻船問屋などの豪商から民家まで、構えはいろいろでも屋根に載せた

能登瓦
比較的新しい家も屋根には能登瓦を使い、景観が守られている

能登瓦が能登らしい景観を作り出している。
能登を訪れたときには、普段気にとめることの少ない屋根瓦を眺めてみてほしい。

■参考文献
 社団法人日本セラミックス協会北陸支部『北陸の瓦の歩み』能登印刷出版部 2001
 『朝日旅の百科 金沢 能登』朝日新聞社 1985
 『新修 七尾市史13民俗編』七尾市史編さん専門委員会 2003

Fのさかな31タチウオより