タチウオ

タチウオと江戸の小咄タチウオと人工真珠

タチウオの身体を覆い、銀色に輝くグアニン。昔はこれが人工真珠の材料として使われていたのをご存知でしょうか。アコヤ貝などから採られる天然の真珠は、あまり産出されることのない珍しさもあって、古くから世界各地で宝石として珍重されてきました。「月の雫」「人魚の涙」と讃えられる美しい光沢は、今も昔も人を惹き付けてやみません。
そんな真珠の輝きを手軽に味わえるのが人工真珠です。

人工真珠の歴史は意外に古く、17世紀半ばのフランスで中空のガラス玉の内側に魚のウロコから造られた真珠箔塗料(パール・エッセンス)を塗り、さらにロウを詰めたのが始まりとされています。
日本では、明治末期に貿易商であった大井徳次郎がフランス製の人工真珠の研究を平賀義美に依頼したのが始まりだそうです。
初めのうちは、タチウオなどから採られるグアニンをセルロイドに練り込み、それをガラス玉の外側に塗り重ねることで人工真珠が作られていました。

グアニンによってキラキラと輝く人工真珠はとてもよく出来ていたそうですが、次第に鉱物から科学的に作られる人工パール・エッセンスをガラス玉やプラスティック玉に塗る方法に変わっていきました。
おかげで人工真珠は安く、大量に圴一の品質で作られるようになったのです。
とはいえ、現在でも人工真珠の高級品として名高い「マジョリカパール」では、魚のウロコから作られるパール・エッセンスが使われています。

天然真珠に、魚由来のパール・エッセンスを使った人工真珠、工業製品としての人工真珠。
価値はそれぞれ違いますが、選択の幅があるというのはとても素晴らしいことではないでしょうか。

猫が追い払った、真夜中の泥棒

ある夜のこと。
店の主人が物音に気付いて眼を覚ますと、そこには夜目にもギラリと光る、抜き身の刀をさげた強盗が。「金を出せ!」と脅された主人はもう恐ろしくて恐ろしくて、布団をかぶってガタガタガタと震えるばかり。
「もう駄目だ…」と観念していると、何とそれまで足元で寝ていた飼い猫が、強盗の持つ刀めがけて飛びかかる。その勢いに驚いた強盗が逃げ去ると、主人は何とか一安心。
「俺をかばって強盗に立ち向かうとは何と感心な猫だろう、どれ一つ褒めてやろう」
布団から出て猫を見ると、猫は刀にかぶりつき、何とも旨そうに食べている。
不思議に思った店の主人が側に寄ってよくよく見ると、それは何と刀ではなくタチウオ…。
強盗も店の主人も猫一匹に叶わない、そんなお話。

Fのさかな31号タチウオより