アイナメ

地方によって異なるアイナメの呼び名

アイナメは、鮎並」・「鮎魚女」・「愛魚女」といろんな漢字で書かれ、それぞれに由来があります。産卵期に縄張りを守って互いの口でかみ合うことから「相嘗」と書かれることもあるそうです。
この魚は昔から親しまれているため、各地には様々な呼び名があります。北海道では「あぶらこ/あぶらっこ(油子)」、東北と関西・四国では「あぶらめ(油魚)」。 これらはまるでアイナメの体に油が塗られているように見えたり、身に脂が多いためにこう呼ばれるようになったようです。
また、同じ場所にじっとしている習性から、東北の一部では「ねう/うえうお(根魚)」・「しんじょ(寝所)」、新潟や丹後では「しじゅう/しじょう(始終)」と呼ばれています。
能登半島では「あぶらめ」と呼ぶことが多いのですが、「しじゅう」と呼ぶ地域もあります。
広島県では「もみだねうしない(籾種失)」という変わった名前になります。この魚をご飯のおかずにすると種もみまで食べてしまうほど美味しいからとか、美味し過ぎて大切な種もみを買うお金をはたいてでも食べたくなるからだそうですが、面白い呼び名もあるものです。
他にも「ええなあ」「こっくり」「とろろ」など、各地方独特の呼び名があり、アイナメの愛され具合がわかります。
英語ではKelpfish(ケルプフィッシュ=藻場の魚)、greenling(グリーンリング=海藻に似た魚)、中国語では学名と同じように「六線魚」と呼ばれます。

あぶらめと輪島塗

石川県能登半島の輪島市といえば、輪島塗が有名です。 輪島塗は職人達の丁寧な手作業によって生み出される漆器の名品。塗りに124もの工程を費やすことで、堅牢優美な漆器が生まれます。
そんな輪島塗に携わる職人はずっと座ったまま仕事をするので、どうしても運動不足になりがちです。そのため、かつての輪島塗の職人達は秋になると一日仕事を休みにして「あぶらめ釣り」に出かけ、英気を養ってきました。
その折、「粋」が真骨頂の職人は自ら「あぶらめ」専門の釣り竿を作り、それに得意の漆芸の腕をふるったといいます。
さて、「あぶらめ釣り」の日になると、職人達は夜明け前から釣り竿をおろし、後から来た女性陣や弟子達は海辺に簡単なカマドを作ります。
釣りたての「あぶらめ」を軽く焼いてから野菜と一緒に鍋に入れれば、青空宴会の準備は万端。釣りの成果を自慢しながら、にぎやかな宴が始まります。現在では秋のレクリエーションとして「あぶらめ釣り」を行う塗師屋さんも少なくなったようですが、伝統ある行事として未来に残ってほしいものです。

Fのさかな24号アイナメより