イワシ

iwashibo

昔、大衆魚だったイワシ、今は高級魚に

イワシと言えば誰もが知っている馴染みの魚です。大量に捕れた時には食卓に上る機会も多く、飽きてしまうこともありました。マイワシは数十年周期で豊漁と不漁が繰り返されていることをご存じでしょうか?不漁期に当たる近年は以前より店頭に並ぶことも少なくなり、たまに大羽と言われる大きなマイワシがあがると高級魚扱いになることも珍しくありません。名前の由来は、いやしい魚→いやしが訛って「いわし」。弱い魚なので「よわし」→「いわし」に転じたとも言われます。

 

 

イワシの生態

主にマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシの3種類を総称して「イワシ」と呼んでいます。イワシを漢字で書くと、魚ヘンに弱と書いて「鰯」となり、文字通り鮮度落ちが早く、すぐに死んでしまったり、サバやアジ、カツオ、マグロなどの肉食性魚類や、クジラ、イルカ、人間などに食べられてしまう弱い魚なのです。

しかしイワシが少なくなると、それを栄養源にしている魚類にも影響が及び、弱い魚といえども食物連鎖では重要な位置を占める大切な魚なのです。食物連鎖で重要な位置を占めるイワシ類は、孵化しても殆どがマグロやカツオ、アジなど他の魚の餌になることが多く成魚になるまでの生存率は低いのです。このようにむさぼり食われるため「海の牧草」と呼ばれるほど。そんなイワシ類は種族が絶えないように他の魚類に比べて産卵数の多いことが特徴です。

餌食になるイワシには敵の攻撃をかわす技があります。密集した大群を作り、大きな塊ごと一斉に同調した泳ぎで敵の攻撃をかわすのです。

イワシは、海の表層近くを浮遊するアミ類、エビ・カニの幼生、ヤムシ、魚卵などの微小な動物プランクトンを摂餌。マイワシは珪藻類などの植物プランクトンも食べます。口を大きく開けて泳ぎ、海水ごと飲み込み密生した鰓耙(サイハ)でプランクトンを濾過摂食します。

 

 

イワシの種類と特徴

マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの外見的な違いは体の黒斑点や口、眼、腹びれの位置などで容易に判別できます。

まずマイワシは体側に7つ前後黒い斑点が並び、別名「ナナツボシ」と呼ばれます。マイワシは、日本海各地の沿岸、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海、オホーツク海、北西太平洋に広く分布。大きな群れで広域に季節回遊します。体形は細長くやや側扁。体色は暗青緑色、腹部は銀白色。体側に1〜2列の7つほどの黒色斑点があり「ナナツボシ」とも呼ばれます。この黒点がはっきりしているものが鮮度が良い。体長は25cmに達します。新鮮なものは、寿しネタや、刺身で、かば焼きや天ぷらで食べられます。別名は、イワシ、ナナツボシ、ヒラゴ、オイサザ、ヤシ【真鰯・ニシン目ニシン科マイワシ属】

 

ウルメイワシは、マイワシに似ていますが黒色斑点がありません。眼は脂瞼とよばれる脂肪膜に覆われているため潤んで見えます。体形は細長く円筒形。体色は暗青色、腹部は銀白色。胸びれと腹びれは黒みがかっています。大物は体長は30cmほどに成長します。ウルメイワシの腹びれは、背びれ起部より後方に位置しています。別名をウルメ、ノドイワシ、ドンボイワシ、メブトイワシ、 ロウソクイワシ、メグロイワシ、センキ、オオメイワシ、ギドと呼んでいます。【潤目鰯・ニシン目ニシン科ウルメイワシ属】

 

カタクチイワシは、体形は細長く円筒形。マイワシに比べて背が青黒いため「セグロ」とも呼ばれます。腹部は銀白色をしていて、ワシは下あごが短く上あごが突き出て見えます。カタクチイワシの腹びれは、背びれ起部より前方に位置しています。カタクチイワシは下あごが短く上あごが突き出ていて、口の形が片寄ってみえることが名前の由来。マイワシ、ウルメイワシと比べてもカタクチイワシの口は大きく眼の後方まで続いています。体長は13cm前後に成長し、カツオの生き餌釣りに使われます。煮干しやシラス、ちりめんじゃこなどに加工されます。お正月のおせち料理に欠かせない田作りに使うイワシは、カタクチイワシの幼魚です。別名は、カタクチ、ヒシコイワシ、セグロイワシ、タレクチイワシ、シコ【片口鰯・ニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属】

 

イワシは、成長の段階による呼び名もあり、3.5cm以下をシラス、3.5〜6cmはヒラゴ、カエリと呼びます。6〜12cmはコバ(小羽)、12〜18cmになるとチュウバ(中羽)。18cm以上はオオバ(大羽)になり、さらに20cm以上の大型はオオガライワシで高級魚として扱われます。

 

 

イワシの栄養

イワシ類は良質のたんぱく質と、病気に対する抵抗力を高め精神を安定させる効果があるカルシウム、その吸収を助けて骨を丈夫にするビタミンDが豊富に含まれます。

血合部分には、皮膚の弾力性を保ち唇のあれを防ぐビタミンB2、悪性貧血を予防、肝臓の強化に役立つビタミンB12、低血圧症や貧血の予防に役立つ鉄分もあります。また脂肪の代謝に深いかかわりがあるB6も多く含み、不足すると皮膚炎、神経炎、肥満、動脈硬化になりやすい。さらに血圧を正常に保つタウリン、血栓の予防や脳の老化防止に役立つEPAやDHAは、青魚の中でも含有量が多く生活習慣病には最強の味方です。ただし、鮮度が落ちると酸化によって逆効果になることも。

 

イワシの目利き

北陸地方では「カゲを見よ」ということがあります。「カゲ」とは鰓蓋を開けると中にブラシ状の鰓耙といわれる部分があり、これを指します。この部分が赤くみずみずしい色をしていれば新鮮な証拠です。目利きのポイントは、眼が澄んで、ふっくらしていること。イワシは鱗がはがれやすく、鱗が残っていれば取り扱いが良好だった証拠。店頭に並ぶ時は鱗がはがれたものが多い。マイワシなら黒点が明瞭なこと。鮮度が落ちると薄れます。体色が鮮明で張りがあること。

 

イワシの食文化と料理

大衆魚の代表であるイワシは、塩漬け、煮干、干物、オリーブ油漬けなどさまざまな加工品が出回っています。このような加工品は山間地域の人達にとって、塩分、たんぱく質、カルシウムなどの補給源として欠かせない貴重なものでした。

イワシを使った自慢の郷土料理は全国にたくさんありますが、加賀や能登にも「こんかいわし」というものがあります。イワシの糠漬けのことを米糠がなまって「こんか」と呼びます。流通事情が悪かった頃に冬の保存食として重宝されたもの。荒天続きで出漁できない時期の食材の一つで、大漁で安値の時にイワシを買込み各家庭で糠に漬込みました。そのまま焼いて香ばしくご飯のおかずに。糠を洗い落として薄切りにし酢をかけてもよし。こんかいわしの旨味と塩味を生かし、野菜と酒粕を加えた鍋料理「べか」(石川県羽咋)も冬場の人気メニューです。

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