掌返しをされた祝い魚「ボラ」/さかなの日
体が大きく食べごたえがあり出世魚でもあるボラは、かつて日本人にとても親しまれていました。
しかし、いつしか人間の身勝手さにより「美味しくない魚」とされてしまった、そんな不憫なボラをご紹介いたします。

“Jumper”の異名を持つ
ボラは大型の魚で、50〜80cmを超えることもあります。この大きな体の2〜3倍にも達する高さまで飛び跳ねます。このため、英語ではJumperやSpringer(どちらも飛び跳ねる魚の意味)と呼ばれることがあります。
近年では飛び跳ねたボラがレース中の競艇選手にぶつかってしまい、選手を失神させる事故が起きたこともありました。
跳ねる理由は定かではありませんが、物音に驚いたり、酸素不足、寄生虫を落とすため、など諸説あります。
「とどのつまり」のとどって?
ボラには、狭い範囲で回遊する習性があります。春から秋にかけては内湾などで成長し、秋を過ぎると外海に出て産卵したり越冬します。この産卵期を迎える秋から冬の時期が、ボラの旬とされています。
ボラは成長につれて名前が変わって行く「出世魚」で、ブリやスズ キと同じようにいくつもの名前を経て育っていきますが、岸近くでよく見られる馴染み深い魚だったせいでしょうか、日本各地に様々な「出世名」が残っています。
例えば、関東地方ではオボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド。「とどのつまり」という慣用句の「とど」は、実はアシカの仲間のトドではなく、ボラの一番最後の呼び名に由来します。ボラがトドと呼ばれるようになるとこれ以上大きくはならないため、「行き着くところ」という意味で「とどのつまり」という言葉ができました。

「臭い」ボラは人間のせい
沿岸でたくさん獲られるボラは、食用として昔から親しまれてきた魚です。
しかし、1960年代以降、高度経済成長期に公害への対策が遅れたため沿岸の環境が汚染され、水質の悪い沿岸で育ったボラは「身が臭い」と言われるようになり、食卓から遠い存在になってしまいました。
人間がボラの棲む環境を汚してしまったのに、そのせいでボラが嫌われるのはなんとも気の毒な話です。


Fのさかなおもしろ図鑑vol.2で
ボラを詳しく載せています♪
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