能登の春告げ魚「目張」/さかなの日

春になると魚屋さんで見かける、目がぱっちりのかわいい魚。
メバルのご紹介です。

「メバル」とは

 春告げ魚と呼ばれる魚はニシンやサワラなどが有名ですが、能登での春告げ魚と言えば「メバル」です。地元では「はちめ(八目)」と呼び、能登半島を囲む沿岸海域のどこでも見られ、昔から親しまれている魚なのです。

 日本近海に棲むメバルの仲間は約30種。その多くは沿岸海域から水深100m〜200m前後の海藻が繁る岩礁域に棲み、ロックフィッシュ(※)と呼ばれる根付魚です。

※根(海藻や岩礁などの障害物)の周りに生息する魚の総称。

 昔はメバルの生息する環境によって個体の色が違うと思われてきましたが、調査研究へ経て胸びれの軟条数に違いがあることや、遺伝子レベルの差異により「赤メバル」「黒メバル」「白メバル」と別種に分類できると発表されました。

 標準和名は文字通り目がぱっちりと張り出しているため「目張」と呼ばれます。伊達に眼が大きいのではなく、上から餌が落ちてくるのを見張っていて捕食するからだとも言われています。

メバル属のおもしろい特徴

 メバルは他の魚と違った繁殖形態をとります。魚の多くは海中に卵を産んで授精し孵化させる卵生ですが、メバルは交尾しメスの体内で授精した卵が孵化させる卵胎生です。このような卵胎生の魚は、熱帯魚のグッピーやサメ類など一部の魚に限られており、珍しいかもしれません。

 実はメバルは成長すると性転換します。メバルの1歳魚はメスとオスの数は同じぐらいですが、5歳魚以上になると殆どがメスに性転換します。性別を見分けることが難しいですが、20㎝を越える大物はメスが大半だと思っていいでしょう。性転換する理由はわかりませんが、種を残すための進化なのかもしれません。

美肌効果も期待できる

 メバルは良質なタンパク質やコラーゲン、ビタミンAなどが含まれています。アカメバルなど皮の赤い部分には活性酸素を抑制する抗酸化力に優れるアスタキサンチンが含まれ、動脈硬化や糖尿病、脳疾患などの予防や美肌効果に役立つといわれています。

目利きのポイント

  • 体に張りがあるもの
  • 目が透き通り潤んでいるもの
  • ウスメバルの場合はエラが鮮やかな紅色

18〜20㎝前後が脂がのっていて人気ですが、調理方法によっては小ぶりなものが好まれます。

能登の春を飾る祝い魚

 能登では祝い事が多い春にメバルの旬を迎えることもあり、特に5月に行われる七尾市の大祭「青柏祭」で振る舞われる料理、「祭りごっつぉ」に欠かせない食材です。
 大物は鯛の代用になることもあるそうです。

 メバルは白身魚で旨みがあり、身離れも良く小骨が少ないので、お子様やお年寄りには食べやすい魚として好まれています。

 一般的には煮付けや塩焼きにされますが、小ぶりなものは唐揚げや南蛮漬けにして楽しまれます。大きいものは刺身にして歯応えや旨みが堪能できます。また三枚おろしにしてムニエルやブイヤベースなどにしても美味しいですね。

スタッフ

メバルが収録されているのは、「Fのさかなおもしろ図鑑Vol.1」です。ぜひ、知識を食べてみてはいかがでしょうか。

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