能登の祭りご馳走の名脇役「コノシロ」/さかなの日

 祭り料理の魚といえば鯛などが代表的ですが、普段ネコマタギと揶揄されるコノシロも能登の春や秋の祭りシーズンには、押し鮨やヌタ料理となって並びます。
 ところで寿司屋で光り物といえば「コハダ」。寿司好きには特別な一品でしょう。
 このコハダが成長するとコノシロになり、出世魚で知られるブリと同じように成長とともに呼び名が変わります。
 しかし、ブリとは逆に若魚の方が人気が高い「コノシロ」の人気の浮き沈みを探ってみました。

※ネコマタギ:猫も食べないほど不味い

生息域は意外と身近

 コノシロは、マイワシやウルメイワシと同じニシン科の仲間。外見こそ違いますが、イワシと同じように群れで泳ぎプランクトンを食べて生息しています。銀白色の体に整然と並ぶ黒点が印象的な魚。寿命は6〜7年と言われ成長に応じて名前が変わることから、ブリやスズキと同じ出世魚として知られています。寿司屋で光りものの「コハダ」といえば知る人も少なくないでしょう。そのコハダが成長するとコノシロと呼ばれます。
 コノシロの産卵期は4〜6月。河口近くの底層域で日没後1〜2時間の間に産卵します。産卵期を迎えた群れは一斉に放卵、放精の産卵行動をとると言われています。
 卵は球形、約1.5㎜の分離浮性卵。孵化直後は3〜4㎜ 。3㎝前後で成魚と同じ鰭条数やキラキラした銀白色の体色になります。
 生後1年で10㎝前後、2年で約12㎝以上、3年で17㎝以上に成長。成長の早いものは1年後に成熟し産卵行動に参加します。1年魚なら約4万粒、3年魚なら約17万粒産卵します。
 餌になるプランクトンが多い内湾や河口付近に群れで棲む定住型。成魚になっても大きな回遊はしません。冬は湾口域のやや深部で越冬します。
 河口付近で泳ぐ魚の群れを見かけたら観察してみてください。体側に黒の点線模様があり、背びれの後方に糸状の長い鰭が確認できたら、それはコノシロかもしれません。

大きくなったのに安い?

 コノシロはブリと同様に成長とともに呼び名が変わる出世魚です。

  • ジャコ、シンコ(幼魚)
    当年生まれの5㎝程の幼魚。味はさっぱりして珍重される。
  • コハダ、ツナシ(若魚・1才魚)
    7㎝~10㎝ぐらいの若魚。寿司種の人気サイズ。小骨の口当たりが殆どなく食べ頃。
  • ナカズミ、ナガツミ(2才魚)
    コハダが12㎝以上に成長したもの。だいたい孵化後2年目頃。
  • コノシロ(3才~)
    15㎝以上からコノシロと呼ばれる。大物は25㎝になる。

※この他に、ツナ、ハビロ、ドロクイなどと呼ぶ地方もある。

 出世魚の代表格であるブリは、成長に伴い市場価格もどんどん上がります。
 コノシロの場合は、大きくなると更に高くなるかと思いきや、予想に反して下落する一方。
 寿司ネタで人気のシンコやコハダサイズの初物は1キロ数万円になることもあるそうですが、大きくなるにつれて価格が下がり市場から遠ざかります。小骨が多いことや独特な匂いが災いするのでしょうか?出世魚といわれる割に存在感が薄くなるコノシロです。

江戸時代、武士に敬遠された諸説

 コノシロは沿岸域に生息するため昔から庶民の知る魚でした。しかし、あらゆる理由により敬遠されることも多かった魚です。
 特に江戸時代の武家社会では、呼び名に言いがかりをつけて食べなかったそうです。当時の随筆で「塵塚談」には、「武家は決して食せざりしものなり、コノシロはこの城を食うというひびきを忌みてなり。」と記されています。これは武士の大切な「この城(コノシロ)」を食べるとはとんでもないというもの。同様にコノシロを焼くことは、「この城を焼く」に通じるとして嫌われました。
 この他にも切腹の際に供えられた魚として敬遠されたそうです。
 ただし、江戸城を築城した太田道灌の場合は逆。『江戸懐古録』によると、航行中の舟にコノシロが飛び込んだことから「九城(コノシロ)我が手中に入る。これ我が武を輝かすの吉兆なり」と喜び江戸城の築城を思い立ったといいます。
 解釈次第で浮き沈みが大きく気の毒な魚だったようです。

お節料理の縁起物

 何かとクセのあるコノシロですが新年を祝うおせち料理に使われることはご存知でしょうか?多忙な現代では、昔のように手間ひま掛けたおせち料理はなかなか作れません。ましてやメニューのいわれなど学ぶ機会も少ないでしょう。
 コノシロを使ったお節とは「コハダの粟漬け」のことで、二の重の縁起物として詰められます。
 コハダの粟漬けとは、コハダの切り身を蒸した粟と一緒に酢漬けにしたもの。
 コハダはコノシロの1才魚のことを指し、成長とともに名前が変わる出世魚なので縁起の良い魚。粟は五穀豊穣を願う意味が込められています。粟はクチナシを使って黄色く染めます。クチナシの実は防腐効果があるため彩りの良いうえに日持ちするメニューとなるわけです。
 この他にも酢漬けにしたコハダを卯の花(おから)を使って鮨にする「卯の花漬」なども作られます。
 コハダのなれ鮨は江戸時代から人気があり、「アジのスー、コハダのスー」と呼び声を上げる鮨売りの行商が存在しました。当時の鮨ネタはもっぱらアジやコハダ。芝居見物の鮨折りもコハダのなれ鮨が人気だったようです。
 能登の祭りシーズンも「ベット(コノシロ)の鮨」として家庭でも作られます。独特な黒点模様が際立つご馳走です。
 今も昔も鮨ネタのコハダは特別な存在ですね。

ベット(コノシロ)の押し寿司
スタッフ

Fのさかなおもしろ図鑑vol.2で
コノシロを詳しく載せています♪

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