石川県で古くから親しまれている「ゴリ」/さかなの日
石川県金沢市の郷土料理で振る舞われる食材の“ゴリ”は、石川県ではカジカやハゼ科の魚のことを呼びます。昔は姿が似ていた魚を、ゴリと一括りに呼んでいたそうです。
石川県には“海ゴリ”と呼ぶ魚もいますが、そちらはハゼ科のキヌバリという海に棲む魚で、お土産のゴリの佃煮でよく見かけます。
今回はゴリの中でも、川に棲むカジカをご紹介します。

卵の大きさで生息場所も変わる
カジカは遺伝的に大卵型・中卵型・小卵型の、3種類に分けられます。
一番大きい卵を産むものは、文字通り「大卵型」と呼ばれるもの。卵の大きさは直径2.5~3.7㎜ほどで和名はカジカ、一生を川で過ごすため「河川陸封型」と言われることもあります。
次が3種の中で真ん中くらいの大きさの卵を産む「中卵型」と呼ばれるもの。卵の大きさは直径2.2~2.8㎜ほどで、和名がまだついていないのですが、とりあえずカジカと呼ばれています。
最後に卵が小さめな「小卵型」。ウツセミカジカとも呼ばれ、卵の大きさは直径1.3~2.4㎜ほどです。
中卵型と小卵型の仔魚は、卵からかえってしばらくたつと川を降って海へと向かいます。一ヶ月ほど過ごすと川に戻るため「両側回遊型」と呼ぶこともあります。
これらのカジカは生息場所も違い、大卵型は川の上流域から中流域にかけて、中卵型は中流域から下流域にかけて、小卵型は下流域にかけて棲んでいます。
成魚の大きさは、大卵型や中卵型の全長は15㎝ほどで、小卵型は17㎝ほどになります。意外かと思いますが、大きい卵の方が大きく育つのではなく、小さい卵だから小さく育つわけでもないところが、面白いですよね。
3種のカジカを見分けるポイントとして、大卵型のカジカは胸ビレの筋が12〜14本で、尾ビレの付け根の帯模様が薄い。中卵型は胸ビレの筋が13〜16本で、尾ビレの付け根の帯模様がちゃんと見える。小卵型は胸ビレの筋が13〜17本あり、尾ビレの付け根の帯模様は太くてはっきりしているという目安がありますが、なかなか判別しにくいようです。
由来は人違いならぬカジカ違い?
カジカを漢字で書くと「河鹿」。もとは「カハシカ」と呼ばれていたものが縮まったようです。
江戸時代に貝原益軒によって著された語源辞典「日本釈名」には…
河鹿なり、
山河にある魚也、
夜なきて其音たかし
「カハシカ/カジカは渓流にいる魚で、夜に高い音で鳴く」と書かれています。
おやっ?と思いませんか。いくらなんでも「魚が鳴く」なんて不思議なことがあるのでしょうか。
実はこれは魚のカジカと、他の生き物を間違えてしまったことによる勘違いが原因です。
カジカガエルというカエルをご存知でしょうか。渓流に棲む夜行性のカエルで、大きさは4〜8㎝ほど。「清流の歌姫」とも呼ばれ、暗くなると鹿のように涼やかな声で鳴きます。
もうお分かりですね。河鹿という名前は、本来このカエルにこそふさわしいものなのです。
ところが、この魚とカエルの姿がよく似ているせいでしょうか、それとも暗闇のせいで何が鳴いているのかわからなかったせいでしょうか、いつの間にか「日本釈名」に書かれたようにこの魚もカジカと呼ばれるようになったようです。

カジカ漁はあの言葉の由来?
カジカの捕まえ方として一番簡単なのは穴釣りでしょうか。川底の石と石が積み上がってできた隙間に仕掛けを落として釣ります。その隙間にカジカが棲んでいれば割と簡単に釣り上げられるので、子どもでも楽しめます。
箱メガネで川底を覗きながら見つけたカジカをすくったり釣ったりする方法もありますが、結構腰に負担がかかるのでちょっと大変。
「ごり押し」という言葉の由来だとされる獲り方もあります。取っ手がついた板で川底をさらってカジカを網へと追い立てる漁の仕方で、この板を「ごり押し板」と呼んだそうです。無理やりに物事を通す感じをうまくたとえていますね。
ゴリ料理が名物の石川県金沢市でも、かつては市内を流れる浅野川や犀川で盛んにカジカ漁が行われていました。ブッタイと呼ばれる竹ザルとゴリ押し板を使う漁は「ゴリ呼び」と言われ、金沢の風物詩だったと言われています。
ブッタイを使った漁は石川県白山市でも行われていて、こちらは川底のカジカやエビなどを足を使って中に追い込んで捕らえるやり方。
石川県輪島市では、三角形の竹カゴを引いて獲る「ゴリ曳き」漁が行われていたそうです。
今ではどれも環境が変わってしまい、このような漁の姿を見ることはなくなってしまいました。
そのため現在では各地で養殖が行われていますし、川に人工産卵床という場所を作って天然のカジカを増やそうとしています。
また、カジカの稚魚を放流したり、禁猟区や禁漁期を設けるほか、卵の採取を禁止したり、獲られるカジカの大きさや漁法を制限するなど、いろいろな試みが行われています。


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